私の母は私が2歳の時に他界した。
なのでほとんど記憶にない。いくらかの写真がその姿をうっすら思い出させてくれる。
父はすぐに再婚したので、それから母の話はあまり出なかった。なのでどういった生涯だったのかよく知らなかった。そして父も5年前にあとを追っかけて行ってしまった。
この間祖母が亡くなり、その法要の間親戚に母のこと併せて親父のことを教えてもらった。色々あるエピソードは後日語るとして、今日は母が残した詩集を紹介させてもらう。実はこの詩集を手にしたのは最近で、それまではあるとは聞いていたが本当にあるのか眉唾物だったし、まさかこんな立派な本になってるとは思っていなかった。
それでは
線路
雨に濡れて 銀色に光る二本の線路
線路は悲しい。
一本では 生きていけないのに
相手を必要としているのに
永久に交り会う事はできない
一駅 着くたびに
重い荷物が 二本の上に乗しかかる。
地面にくい入りそうな
互いの姿を 手を取り合って
その重さに耐えている。
そして 力一杯 励ます。
「もうすぐだよ 終着駅は」と、、、
終着駅についても
枕木は 一定した尺度で
二本をはばむ
交り合う事のできない二本は
茶色の錆びた涙を流す
発行日1974年9月15日
私が産まれる6年前に出版されている。すなわちこの本が世に出てから僅か8年でその人生の幕が降りる。
実はこの母がどこかで守ってくれていると思っていたから、幼少の頃、なにに臆する事なく生きて来れたんだよね。
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